長引かせ戦略の防止
2018年11月7日
昨日、40年ぶりの民法の改正で、遺産分割協議がこじれた場合でも家裁の判断を待たなくても法定相続分の3分の1まで、または法務省令で定められた金額まで預金が引き出されるようになったということを当ブログで書きましたが、この改正により残された遺族の生活の困窮を防ぐ以外にももうひとつ大きな効果があります。
故人の口座が凍結されると、葬儀費用や入院費用の支払いなど手元資金に余裕がなくなるケースに陥ることはよくあります。このように資金的に余裕のない相続人は、なるべく早く遺産分割協議を終わらせて遺産を手にしたいと考えます。他の相続人との話し合いさえまとまれば自分の相続分は受け取れるので、そのような思考になりがちです。
一方、もし遺産に頼らなくても資金的に余裕のある相続人にとっては、そのような弱みに付けこんで遺産分割協議を意図的に長引かせて相手の譲歩を引き出すという戦略を取ることも可能です。今回の法改正でこのように資金的な余裕の有無が相続人間の交渉材料とならない可能性が強まるので、この部分も有意義な法改正といえそうです。