米中貿易戦争の今後について
2019年5月31日
アメリカと中国の貿易戦争は、日本や東南アジア諸国を巻き込んで世界経済波乱要因の最重要項目になっています。今のところ、ややアメリカ有利で中国が押されているというような流れに見えますが、先日ある著名エコノミストから別の角度の見方を教わりました。
中国には構造改革の足かせとして、実質的に経営が破たんしている国営企業や地方政府系企業で「ゾンビ企業」と呼ばれるような会社が2000社近くあります。これらのゾンビ企業は中国の過剰生産と過剰債務の元凶で、習近平は就任以来このゾンビ企業を整理することを目標としていましたが、ゾンビ企業は地元の有力者や政敵である江沢民守旧派の抵抗が強いことに加え、ゾンビ企業を整理することによって大量に失業者が出てしまい現政権が批判にさらされるということもあり、遅々として進んでいませんでした。
しかし、トランプ大統領が仕掛けてきた貿易戦争という「外圧」により、習近平はゾンビ企業の整理がしやすくなりました。今年に入ってからそれは拍車がかかり、今も外圧を理由にゾンビ企業の整理は着々と進んでいるという状況になっています。
日本がバブル崩壊後、不良債権処理に長い間苦しめられてきましたが、中国ではトランプ大統領が仕掛けてきた外圧のおかげでそれが一気に進んでいるとすれば、この米中貿易戦争はトランプ大統領、習近平国家主席双方に理があることになり、この貿易戦争は短期にまた簡単には解決しない構造的な問題をはらんでいると言えます。日本の株価の低迷はもう少し長引くような気がします。