海外不動産活用の盲点(2)
2018年10月3日
海外不動産を活用した節税対策の問題点として、以下の3つがあげられます。
1.出口戦略が難しい
昨日お伝えした通り、短期間に多額の減価償却費を計上するので、譲渡所得の計算上は不利になります。譲渡所得の計算は原則として以下のとおりです。
譲渡収入-譲渡した資産の取得費-譲渡費用
この中で、「譲渡した資産の取得費」は不動産などについては
譲渡した資産の購入金額-経費とした減価償却費
となります。分かりやすく言えば譲渡所得は売買益に対して課税がされるわけですが、多額に減価償却を計上すると買った金額がどんどん下がり、売買益が生じやすくなってしまいます。保有時の税金は軽減されるかもしれませんが、売却時に多額の税金がかかり、しかも容易に物件の管理も出来ない海外不動産は長期的にみるとデメリットも多いはずです。
2.金利が高い
日本では長らくゼロ金利政策(マイナス金利まで)がとられ、通常物件購入にローンを使うことを考えると金利は低ければ低いほど有利に働きますが、アメリカの金利は上昇局面にあります。アメリカの10年物国債の金利が3%近い状況では、30年物の不動産金利は5%近くなってしまうこともあります。5%の金利を払っても利回りを確保するのはなかなか骨が折れることになるでしょう。
3.会計検査院の税制改正意見
最近は、会計検査院が税制改正を促す意見を関係官庁に表示する例が目立ってきています。
有名な例では、自販機設置によるマンションの消費税還付手法への意見表示をし、即座にその手法に対する対策が取られたということがあります。
会計検査院の平成27年度決算検査報告のなかに「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却について」というものが含まれています。
このことから、今後この海外不動産を用いた節税スキームになんらかの納税者にとっては改悪となる法改正がされるリスクも多分にあると思われます。
海外不動産を用いた節税スキームについては上記3点も含めた検討が必要です。